T120 @Piano O4 L4 C D E F。C12 が三連8分、, でパート区切り。最大 64 小節。ヤマハが 1980 年代なかばに出した FM 音源チップです。上位の OPL 系を思いきり安く作り直したもので、 2 オペレータの FM 合成、同時に 9 音。リズムを使うときは旋律 6 音+打楽器 5 種という配分になります。
この音源の性格を決めたのは、その割り切りでした。自由に音色を作れる枠はたった一つだけ。 あとは ROM に焼かれた 15 種類から選ぶ。バイオリン、ギター、ピアノ、フルート、トランペット…… 名前は付いているけれど、どれも本物には似ていない。似ていないまま、確かにその楽器の顔をしている。 制約から生まれたあの音の手触りは、今聴いてもすぐ「あの音だ」と分かります。
MSX では MSX-MUSIC の名で標準になり、FM-PAC を挿すか、MSX2+ 以降なら最初から鳴りました。 セガのマークIII / マスターシステムにも FM 音源ユニットとして載っています。
音色は ROM の 15 種類をそのまま、2 オペレータ FM とリズム音も当時の作りに沿って鳴らしています。 一方で 9 音の上限は外しました。敬意は音そのものに払うべきで、 制約を再現することではないと考えたからです。書きたいものが書けることを優先しています。
子どもの頃、MSX に出会いました。
あの機械のすごさは、性能ではありませんでした。プログラムも、ゲームも、絵も、音楽も、 ぜんぶ同じ一台の中で地続きだったこと。あいだに境目がありませんでした。 BASIC を打ち込めば絵が出て、続けて書けば音が鳴る。作る側と遊ぶ側のあいだに壁がなかった。
MSXマガジンの BASIC 講座を、雑誌を開いたまま写経しました。 一文字打ち間違えて動かず、目を皿にして見比べて、直って、鳴ったときの音。 自分で音楽を鳴らせるのだと知った瞬間のことは、今でも覚えています。
当時はそれが当たり前だと思っていました。今になって、あれがどれほど贅沢な環境だったか分かります。 いまの子どもたちの手元にある機械は、あの頃より何万倍も速い。 けれど「電源を入れたら、すぐ自分で何か作れる」場所は、かえって見つけにくくなった気がします。
だからこれを作りました。開いたらすぐ音が鳴って、譜面が書けて、鳴らして、直せる。 音は、あの頃の音で。譜面は、学校で習うとおりの形で。 子どもが最初の一音を置く場所になれば、それでいいと思っています。